ごあいさつ

第13回学術集会開催まで、あと1カ月に迫ってまいりました。

本学会は、過去12年間にわたる研究会活動を通して、産学連携を軸に新規分子標的薬の開発に繋がるシーズの探索から創薬への展開、前臨床での開発、前臨床から臨床への応用、臨床での実用化(育薬)という点において企業、基礎医学・薬学、臨床医学のそれぞれから最新情報が発表され、活発な議論がされる場として大きな役割を担っております。

第13回日本がん分子標的治療学会学術集会は、研究会組織から学会へと移行した最初の年度の学術集会であり、会員の方々から多数の演題抄録(161演題)が寄せられました。「がん分子標的治療とバイオマーカーの点と点を結ぶ展開」というテーマを設定しましたところ、プログラム委員からのご提案並びにご協力が得られ、魅力的なプログラムを作り上げることができました。改めて御礼申し上げます。

今回、新しい企画の一つとして、6月24日の夕方にOpening Session(基調講演(2演題)とWelcome Reception)を設けました。そのため当初の予定より会期を1日早めることといたしました。遠路はるばる参集される会員が気軽に集い、親交を深める場として活用頂ければと考えております。また、学術集会本番に向けて気分転換を図って頂ければと期待しております。

二つ目の新企画は、Year in Reviewのセッションを2会場にてそれぞれ1時間設定し、進歩の著しい分子標的薬の基礎と臨床研究に関する8つのトピックスを取り上げ、過去1年間の進歩と今後の展開についてそれぞれ先端的に取り組んでおられる研究者の方々に概説して頂く予定です。会員の方々にとっては他の専門領域の最近の進歩を理解する良いきっかけとして役立てて頂ければ幸いです。

三つ目の新企画として、25日のシンポジウムは創薬という観点から、産と学のそれぞれを代表する形で座長をお願いし、「最先端創薬:ベンチサイドから前臨床までのステップアップ」というテーマで企画頂きました。26日のシンポジウムも育薬という観点から、前臨床試験から初期段階の臨床試験レベルにある分子標的薬開発を取り上げ、「臓器微小環境とがん分子標的治療」というテーマにて企画して頂きました。薬学系、医学系の基礎研究者が多い本学会の特色をフルに出して頂き、臨床系研究者との連携にてがん分子標的治療に向けたシーズ発見による創薬からバイオマーカー開発による育薬へと展開する一助になればと念願しております。

今回、ワークショップへの演題数増加に対応し、討議時間を十分に確保するために2会場での同時進行とさせていただきました。関連する演題が一部重なる可能性もありますが、2会場は隣接しており、瞬時にご移動頂けますのでご容赦いただければ幸いです。また、ポスターセッションも口演会場に隣接させ、26日のゴールデンタイムに設定し、活発な討議ができる場を用意しております。若手研究者の優秀な発表については選考により特別賞を授与する予定であります。

ランチョンセミナー開催には、企画面についても協賛企業のご理解とご協力が得られ、がん分子標的治療開発研究において欠かせない情報が4つのテーマで企画されております。会員にとってbrain stormingの場になることを期待しております。

平成20年11月1日より、初代の「日本がん分子標的治療学会」理事長には、生みの親でもある鶴尾 隆博士が満場一致で選出・就任されましたが、誠に残念なことに、同年12月16日にご逝去されました。鶴尾博士は、生前、がん克服に向けた分子標的治療研究への夢を常日頃から語られ、国際的な産学連携活動への取り組みを積極的に推進されていただけに、突然の死は今でも信じられない心境です。急遽、故鶴尾博士を偲ぶための追悼シンポジウムを企画させて頂きました。本学会の継続的な発展こそが、故鶴尾博士に報いる唯一の道ではないかと考えております。

最後に、故鶴尾博士の本学会への多大なる貢献と数多くの功績を称え、心よりご冥福をお祈り申し上げるとともに、本学会の充実と発展のために会員一同が努力し、産学連携にて日本からがん分子標的薬が開発され、医薬品として育っていくことを念願しております。